引籠ひっこも)” の例文
と妓王は、二十一という花の盛にいさぎよく別れを告げると、髪を切って嵯峨野さがのの奥に小さないおりをつくって引籠ひっこもってしまった。
さびしくってなりません、本当ほんとにおはずかしゅうございますが、こんな山の中に引籠ひっこもっておりますと、ものをいうことも忘れましたようで、心細いのでございますよ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いいえ、そうしてあけておかないと、お客様が通っても橋銭を置いて行ってくれません。ずるいからね、引籠ひっこもって誰も見ていないと、そそくさ通抜けてしまいますもの。」
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車馬しゃばの通行をめた場所とて、人目の恥に歩行あゆみも成らず、——金方の計らひで、——万松亭ばんしょうていと言ふみぎわなる料理店に、とにかく引籠ひっこもる事にした。紫玉はただ引被ひっかついで打伏うちふした。が、金方きんかたは油断せず。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
車馬の通行を留めた場所とて、人目の恥に歩行あゆみもならず、——金方きんかたの計らいで、——万松亭ばんしょうていというみぎわなる料理店に、とにかく引籠ひっこもる事にした。紫玉はただ引被ひっかついで打伏した。が、金方は油断せず。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)