引攣ひきつ)” の例文
赤黄色いラムプの片明りの中に刻一刻と蒼白く、痛々しく引攣ひきつれて行く福太郎の顔面表情を、息を殺して、胸をドキドキさせながら凝視していた。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
半面紅に染んだ顔は、恐ろしい苦痛に引攣ひきつって、カッと見開いた眼には次第に死の影が拡がるのです。
座敷へ上がって胡坐あぐらをかくと、高木は顔を引攣ひきつらせて畏まり、しきりに上眼づかいをしている。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
こどもを山にかずける度びに翁の腹にできたはらわたの捻纏ねんてんは、だんだん溜って翁の腹をになの貝の形に張り膨らめた。それに腹の皮を引攣ひきつられ翁はいつも胸から上をえびづるのようにたわめて歩いた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それは源次の引攣ひきつり歪んだ顔であった。汗と土にまみれた……。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)