引張ひっぱり)” の例文
彼はこの気掛が、自分を駆って、じっと落ち付かれない様に、東西を引張ひっぱり回した揚句、ついに三千代の方に吹き付けるのだと解釈した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その西の手から東の手へ、一条ひとすじの糸を渡したので町幅をって引張ひっぱり合って、はらはらと走り、三ツ四ツ小さな顔が、かわがわる見返り、見返り
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
土地から蝋燭代を貰って景気をけに出る棟梁株あたまかぶの縁日商人に五種あって、これを小物、三寸、転び、ぼく、引張ひっぱりとする。
「高瀬は、君、あんまり澄してるからね、ちっと引張ひっぱり出さんけりゃ不可いかんよ」と言って、相川は原の方を見て、「君も引越して来たら、是非吾儕われわれの会の為に尽力してくれ給え」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)