廷丁ていてい)” の例文
間もなく一人の廷丁ていていに出会ったが、——Kは今では、私服の普通のボタンに混じってついている金ボタンですぐどんな廷丁でもそれとわかるのだった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
私の姿を見ると、廷丁ていていは私のために被告席を用意し始めた。その間私は、かむっていた深編笠ふかあみがさを手に、部屋の入口のところに黙って立っていなければならなかった。
新聞記者らしい人や、刑事巡査らしいものもごたごた出入をして居る。田村が廷丁ていていと何か云ひ合つてる。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
怪漢の膝へ、重い大谷石を乗せて置いて、係りの廷丁ていていが、太い撲り棒で、背中を滅多打ちに撲りつけた。ところが最後の一打が撲りどころが、いけなかったらしい。
純情狸 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ところへ紺飛白こんがすりあわせ一枚を、素肌に纏うた呉一郎が、二人の廷丁ていていに腰縄を引かれて這入って来ると、三人の紳士は左右に道を開いて正木博士に侍立じりつした形になった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
買収のきく監視人や蒙昧もうまいな監督、最もうまくいって謙遜けんそんな予審判事を使っているばかりでなく、さらに、ともかく上級および最高の裁判官連をかかえ、それとともに、無数の広範な、廷丁ていてい、書記
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
「もう十時半でせう。昨日裁判長から九時にそろつて下さいと云はれたとき、海城さんは毎日八時半に弁護人は一同打揃つて居りますなどと、真面目に云つてらしつたぢやありませんか」と廷丁ていてい理責りぜめ
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)