廂越ひさしご)” の例文
ちらと流し目にお菊のほうを見もしたし、村重の感情ももちろんすぐ受け取っていたろうに、飽くまで涼しそうに、廂越ひさしごしに、夜空の星のまたたきを見まもっているだけだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風呂先で囲った茶釜ちゃがまの前に、端麗たんれいに坐っていた。茄子色なすいろ茶帛紗ちゃぶくさに名器をのせ、やがて楚々そそと歩んで、内匠頭の前へ茶わんを置いた。そして彼の視線と共に、廂越ひさしごしのあおい空に見入った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廂越ひさしごしに、春の雲がうるわしい。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)