庶幾ちか)” の例文
転瞬てんしゅんの間に内外ないげを断じ醜を美に回した禅機を賞し達人の所為しょい庶幾ちかしと云ったと云うが読者諸賢しょけん首肯しゅこうせらるるや否や
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若し夫れ足尾の峯を攀ぢ渡瀬わたらせの流を下るの後は髣髴として「足尾鑛毒問題」なる一個の面影を描くに庶幾ちかからんか、(二月十五日夜佐野町にて木下生)
佐野だより (旧字旧仮名) / 木下尚江(著)
中に就いて清の嘉慶年間編纂の『咸寧縣志』『長安縣志』に載する所の、唐代の京城の考證は尤も出色で、記録と實地を併せ考へ、古今の對照やや眞を得たるに庶幾ちかい。
大師の入唐 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
しかし当時伊沢分家が家政整理を行つたものと見たならば、過誤なきに庶幾ちかからう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
薄給にして廉なるは君子たるに庶幾ちかし。上下皆濁りし世の中に我只〻此人を憐む。
夜寒十句 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここニオイテカ彼ニナキ所ノモノ往々我ニアリテ我ニキシ所ノモノ彼ことごとクコレヲ補ヘリ。有隣舎ノ沿革ヲ知ラント欲スルモノ拙著トあわセテ石黒氏ノ近業ヲ読ミたまハヾ始メテ遺憾ナキニ庶幾ちかカラン
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)