幾分いくら)” の例文
丁度十五位の娘の時のことを三吉も幾分いくらか知っており、嫂は又、その頃房州の方で一夏一緒に居たことも有って、大凡おおよそ気心は分っていたが
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お吉は夫の顔を見て、いつもの癖が出て来たかと困つた風情は仕ながらも自己おのれの胸にものつそりの憎さがあれば、幾分いくらかは清が言葉を道理もつともと聞く傾きもあるなるべし。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
考へてふさいだところで、つまらない世の中に儚い人間と生れて来た以上は、どうも今更為方が無いぢやないか。だから、つまらない世の中を幾分いくらか面白く暮さうと考へるより外は無いのさ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人の紹介で逢つて見たことも有るし、今歳ことしになつて二三度手紙の往復とりやりもしたので、幾分いくらか互ひの心情こゝろもちは通じた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
木曾に居る時も、幾分いくらか彼はその心地こころもちを紙にむかって書いた。こうして僅かばかりの地所でも、実際自分で鍬をって耕してみるということは、初めてである。不慣な三吉は直に疲れた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「姉さん、そういう時分に家の方のことが幾分いくらか解りそうなものでしたネ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と文平に言はれて、不平らしい校長の顔付は幾分いくらやはらいで来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)