帕子ハンケチ)” の例文
時とすると学士はフロック・コオトの後の隠袖かくしから白い帕子ハンケチを取出し、広い額の汗を押拭って、また講演を続けた。時々捨吉は身内がゾーとして来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お雪はその紙に包んだ女持の帕子ハンケチを眺めながら、「汽車がおくれて、大分停車場で待ちましたよ——三十分の余も」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
涼しい風の来そうなところをえらんで、腰を掛けて、相川は洋服の落袋かくしから巻煙草を取り出す。原は黒絽くろろの羽織のまま腕まくりして、帕子ハンケチで手の汗を拭いた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相川は金縁の眼鏡を取除とりはずして丁寧に白い帕子ハンケチいて、やがてそれを掛添えながら友達の顔をながめた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
患者等の借りて住む家まで見て廻つたと言つて、帕子ハンケチに包んだものを提げながら戻つて来た。平素いつもよりは顔のソバカスなども濃く多く顕れ、色もすこし※ざめて居た。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その日は電車でなくくるまで、嫂が附属の看護婦一同へ帕子ハンケチなどを途中で買い求めて行った。義雄兄は最初から慈善の意味で建ててある病院へ嫂を入れることを好まなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
節子は墓のすみに小さな帕子ハンケチを敷いて、例の灰色のコートのままその石の上に腰掛けた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
終つて演壇を下りる頃には、手に持つた帕子ハンケチが紅く染つたとのことである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「それ、御覧なさいな」とお雪は帕子ハンケチを取出した。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「計画とは?」と原は帕子ハンケチで長い口髭を拭いた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)