巻烟草まきタバコ)” の例文
旧字:卷烟草
殿下も待兼まちかねておはすればと促されて、まだ大尉たいいになりてほどもあらじと見ゆる小林といふ少年士官、口にくわへし巻烟草まきタバコ取りて火鉢ひばちの中へ灰振り落して語りは始めぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
先生はあきれたといったふうに、私の顔を見た。巻烟草まきタバコを持っていたその手が少しふるえた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まどもとなる小机に、いま行李こりより出したるふるき絵入新聞、つかひさしたるあぶらゑの錫筒すずづつ、粗末なる烟管キセルにまだ巻烟草まきタバコはしの残れるなど載せたるその片端に、巨勢はつらづえつきたり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)