差伸さしの)” の例文
「両方よ」と、ジナイーダは答えて、彼に両手を差伸さしのべた。軽騎兵がキスしている間、彼女は肩越しにわたしを見ていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
と両手を差伸さしのべれば、お嬢様は恥かしいのが一杯なれば、目もくらみ、見当違いのところへ水を掛けておりますから、新三郎の手も彼方此方あちらこちらおいかけてようよう手を洗い
一同は一先ひとまず種彦を二階へ案内するや否や、茶を持運ぶ女中の立去るをおそしと、左右から不安な顔を差伸さしのばすのであった。種彦は脇差を傍に扇を使いながら少し身をくつろがせ
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ジナイーダはわたしの前に立つと、わたしを一層よく見ようとするかのように首を少し横にかしげ、いとも荘重そうちょうに片手を差伸さしのべた。わたしは眼の中が暗くなった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)