)” の例文
本当にいなくなるか知らん? そういうような奴はくあるんだが、其様なことを言っても、なか/\急に何処へも行きゃしないって。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
と細い聲で、靜に、冷笑的に謂ツて、チラと對手あひての顏を見る。そしてぐいと肩をそびやかす。これは彼が得意の時にく行る癖で。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
少女は、北國の少女にく見受ける、少し猫背のやうな體格ではあツたが、色の白い髮の濃い、ふツくりした顏立であツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
此の頃は吾々の知った者が、多勢彼処あすこに行くそうだが、僕は、最早あんな処に余り行かないようにしなければならん。……安井なんかも、く行くそうだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
叔父は其の時分五六人の小資本家と合同して、小規模の麥酒釀造會社を經營中であツたが、綾さんはく叔父の家に來た。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それのみならず、大学生に馴染なじみがあるとか、あったとかいうのが此の女の誇で、あとになってもく「角帽姿はまた好いんだもの。」と口に水の溜まるような調子で言い/\した。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
初冬の雨上りの朝には、く此樣な光景を見るものだと思ツただけである。そして何時か、此のまちの東の方を流れてゐるS……川にけられた橋の上まで來た。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
で日は家中に射込むてすべ露出むきだし……薄暗い臺所には、皿やら椀やら俎板やらしちりんやらがしだらなく取ツちらかツてゐるのも見えれば、く開ツ放してある押入には
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)