屋守やもり)” の例文
かわやのはどうにもならないが、梯子段の近辺は手すりにのぼった。窓の近くは窓にのぼり、欄間に手をかけて屋守やもりの這うかたちでした。
屋守やもりのように塀板へひらみついて、じっと首を垂れ乍ら、ころころと足元の小石にいたずらをしていたが、突然クスクスと笑い出したかと思うと、吐き出すように言った。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
塀へ屋守やもりのやうにへばり着く八五郎の肩を踏んで、平次は塀越しに外を眺めてをりましたが、やがて靜かに降りると、ポンポンと八五郎の肩のあたりを拂ひながら言ふのです。
そのために、元来は美しかるべき手全体が屋守やもりのような感じを与えた。
理想の女 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
これは後でわかつた事ですが、駒吉の熊五郎はねらひをつけた大家へ晝のうちまぎれ込み、得意の忍術で物の蔭や壁際に屋守やもりのやうにへばり附いて、夜更けを待つて仕事をするのでした。