小豆粥あずきがゆ)” の例文
正月十五日の小豆粥あずきがゆを始めとし、正式の粥には塩を使わなかった。その点だけは後々解しにくくなって、このような説明が考え出されたのであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おなじく十五日、貴賤小豆粥あずきがゆを炊くのは、平安の世のいわゆる餅粥の節供で、同時に毬杖ぎっちょうをもって女の腰を打つしきたりも、江戸をはじめ諸国に見られた。
ちょうど家では二十日正月はつかしょうがつを兼ねて、暮れに生まれた男の子のために小豆粥あずきがゆなぞを祝っていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
正月の衣類をかばんに詰め、一時間程話してから、松の内が過ぎたら年始を祝いに来ると云って帰ったが、正月十五日の朝に来て、小豆粥あずきがゆを食べ、その日は少しゆっくりして午後に帰った。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
起抜けに今日様こんにちさまを拝んだ早耳三次が、花川戸の住居でこれから小豆粥あずきがゆの膳に向おうとしているところへ、茶屋町の自身番の老爺があわただしく飛込んで来た。
大同三年の十一月二十四日に、一人の旅僧が来て食を求めたので、ちょうどこしらえてあった小豆粥あずきがゆを与えると、その粥には塩気がないから、旅僧は不審に思いました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この日の小豆粥あずきがゆを果樹に食べさせ片手に鎌・鉈などをとって、恩威二つの力をもってなるかなるまいかを詰問する作法なども、雪国の方の特色といえば、雪が樹の根にうずたかくして
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)