射透いとお)” の例文
基経が辿たどりついた土手の上に、津の国の茅原かやはらは半身を川の方に乗り出したまま深く胸を射透いとおされて、呼吸いきを絶っていた。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
秋の日は赫々かくかくたる眼光を放ちて不義者の心を射透いとおせるなり、彼は今日もじ籠りて炉の傍に坐し、終日飯も食わずただ息つきてのみ生きておれり、命をかけて得たりし五十金
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
緑葉みどりはの香に、心が引き寄せられているようでありながら、しかも、目には肌の氷のような、声の細い胸を射透いとおすような、女怪の住んでいる、灰色の空、赭いろのくすんだ色をして
北国の人 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)