くは)” の例文
もつとも丑松の目に触れたは、式の始まるといふ前、くはしく読む暇も無かつたから、其儘そのまゝ懐中ふところへ押込んで来たのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『あの演説の筆記を見たら、猪子先生の書いたものを読んで見たくなつた。まあ君はくはしいと思ふから、其で聞くんだが、あの先生の著述では何が一番傑作と言はれるのかね。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
平素ふだんは其程注意を引かないやうな物まで一々の印象が強くくはしく眼に映つて見えたり、あるときは又、物の輪郭かたちすら朦朧もうろうとして何もかも同じやうにぐら/\動いて見えたりする。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)