富贍ふせん)” の例文
彼には何か意固地いこじなものがあった。富贍ふせんな食品にぶつかったときはひといろで満足するが、貧寒な品にぶつかったときは形式美を欲した。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
中学時代に、自分ながら誇っていた想像の富贍ふせんなことなどは、もう俺の頭の中には、跡形もなくなっている。が、ともかくこの脚本を書き上げる。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そこでしらべてみると、「女子ニハ皮膚下ノ脂肪富贍ふせんナルガ為ニ形態豊満ニシテ、男子ニハ筋肉腱骨ノ強大ニシテ挺起ていきスルガ為ニ其形態稜々トシテ鋭シ」
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
春風馬堤曲に溢れたる詩思の富贍ふせんにして情緒の纏綿てんめんせるを見るに、十七字中に屈すべき文学者にはあらざりしなり。彼はその余勢をもって絵事を試みしかども大成するに至らざりき。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「春風馬堤曲」にあふれたる詩思の富贍ふせんにして情緒の纏綿てんめんせるを見るに、十七字中に屈すべき文学者にはあらざりしなり。彼はその余勢を以て絵事かいじを試みしかども大成するに至らざりき。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)