存命ながら)” の例文
存命ながらえて坊主になって老い朽ちた。娘のために、姉上はそれさえお引取りになった。けれども、その魂は、途中でおす海月くらげになった。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その娘はもう二十年も昔から、存命ながらえていることやら死んでしもうたことやらも知れぬものになってしまう、わずかに残っていたこの太郎坊も土に帰ってしまう。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
っかさんまでに御苦労を掛けますのもわたくし故で、何とも御親切のお礼の申し様もございませんが、何分わたくし存命ながらえておりますと、他から夫の悪事が露見してもわたくしが申したとしか思われません
貧乏根治を志願の一としてこの世に存命ながらえおるこの物語の著者のごときは、書を焼き筆を折って志を当世に絶つのほかはないが、幸いにして私の見るところはマルサスとやや異なるところがある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
かく存命ながらへて今日までも、君にかしずきまゐらせしは、妾がために雄の仇なる、かの烏円をその場を去らせず、討ちて給ひし黄金ぬしが、御情にほだされて、早晩いつかは君の御為おんために、この命をまいらせんと
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)