孑孑ぼうふり)” の例文
例えば何月何日にらいが鳴って何とかいう家におっこちたという通信種を、その家の天水桶に落雷して孑孑ぼうふりが驚いたという風に書いて
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
やがてそれが孑孑ぼうふりみたいに動きはじめ、次第に大きくなって鳥の形になり、黒い翼がみえ、声がきこえて、それはみな島をめがけて帰ってくる烏だということがわかる。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
六尺で面桶めんつうほど太く、頭が体に直角をなして附した状、槌の頭が柄に著いたごとしといい、あるいは長二尺ほどの短大な蛇で、孑孑ぼうふりまた十手を振り廻すごとく転がり落つとも
日のうち宛然さながら沸くが如く楽み、うたひ、ひ、たはむれ、よろこび、笑ひ、語り、興ぜし人々よ、彼等ははかなくも夏果てし孑孑ぼうふりの形ををさめて、今将いまはた何処いづく如何いかにして在るかを疑はざらんとするもかたからずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
孑孑ぼうふりの水や長沙ちょうさの裏長屋
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
予山中岸辺で蝮を打ち殺したつもりで苔など探し居ると、負傷した蝮が孑孑ぼうふり様に曲り動いて予の足もとに滑り落ち来れるに気付き、再び念入れて打ち絶やした事三、四回ある。
孑孑ぼうふりの水や長沙ちゃうさの裏長屋
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)