妄誕もうたん)” の例文
右の武者修行の現に見た物語をいとぐちとして、それから炉辺で語り出されるおのおのの物語は、主として甲州裏街道に連なる、奇怪にして、荒唐にして、空疎にして、妄誕もうたんなる伝説と
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あえて穿鑿せんさくをなすにはあらず、一部の妄誕もうたんのために異霊いれいきずつけんことを恐るればなり。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近代の御伽百物語おとぎひゃくものがたりの徒に至りてはそのこころざしやすでにろうかつ決してその談の妄誕もうたんにあらざることを誓いえず。ひそかにもってこれと隣を比するを恥とせり。要するにこの書は現在の事実なり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
現に「農家義人伝」は「伝吉、一郷いっきょう悪少あくしょうと共にしばしば横逆おうげきを行えりと云う。妄誕もうたん弁ずるに足らざる也。伝吉は父讐ふしゅうを復せんとするの孝子、あに這般しゃはん無状ぶじょうあらんや」と「木の葉」の記事を否定している。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)