天外てんがい)” の例文
すると何処ともなく天外てんがいになつかしい声が聞えて、さわさわと木の葉が揺れるかと思うと、日頃恋い慕っていた姉が、繁みのなかから出てきたのである。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三十人もあったろうと思われる甲冑かっちゅう武士ぶしが、なにも知らずにいるところへ、なにもいわずに、ズラリと槍の尖をそろえてきたのだから、きも天外てんがいに吹ッとんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露伴、藤村とうそん、鏡花、秋声等、昭和時代まで生存していた諸作家は別として、僅かに一、二回の面識があった人々は、この外に鴎外おうがいびん魯庵ろあん天外てんがい泡鳴ほうめい青果せいか武郎たけおくらいなものである。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
炬燵のかたわらには天外てんがいの長者星が開けて伏せてあった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)