大鼾おほいびき)” の例文
「氣の毒なことに、昨日まで床の上に起上つてゐたが、今朝の騷ぎでとりのぼせたものか、まるつきり正體もありません。大鼾おほいびきをかいて寢てゐる側で二番目娘のお半さんが介抱だ」
が、這麼事こんなこと女主人をんなあるじにでも嗅付かぎつけられたら、なに良心りやうしんとがめられることがあるとおもはれやう、那樣疑そんなうたがひでもおこされたら大變たいへんと、かれはさうおもつて無理むり毎晩まいばんふりをして、大鼾おほいびきをさへいてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)