大襖おおぶすま)” の例文
と、大炊は立って、すでに二寸ほど開いている大襖おおぶすまのさかいを、更にもう少し開けてもどって来た。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
円福寺に伝うる椿岳の諸作の中で最も見るべきものは方丈の二階の一室の九尺二枚の大襖おおぶすまである。
偉なる高麗焼こまやきの大花瓶に一個の梵鐘ぼんしょうが釣ってあり、また、銀の大襖おおぶすまにつらなる燭台の数は、有明ありあけの海の漁灯いさりびとも見えまして、さしも由緒ある豪族の名残はここにもうかがわれる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が、家臣に何かささやくと、忽ち、正面の大襖おおぶすまが除かれ、二次の馳走として用意されていた猿楽さるがく役者が、楽器を調ととのえ、扮装ふんそうをこらし、待ち控えていて、すぐ狂言舞を演じはじめた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)