大番頭おおばんがしら)” の例文
明和三年に大番頭おおばんがしらになった石川阿波守総恒の組に、美濃部伊織と云うさむらいがあった。剣術は儕輩せいはいを抜いていて、手跡も好く和歌のたしなみもあった。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ほほう……麹町の法月一学殿といえば、大番頭おおばんがしらをお勤めになる七千石の旗本、その御子息であらっしゃるか。ふウむ……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大番頭おおばんがしら石川内蔵允くらのすけの三人を二之丸向かい屋敷に呼び寄せ、朝命をもって死を賜うということを宣告した。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御代替おだいがわりになってもこれというほどの異動はなかったが、こんどは思い切った御仕置で、先代の側仕えをしていた向きは、大目附役、大番頭おおばんがしら、寄合以下、番頭、用人、給仕の果てにいたるまで
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ところで、弦之丞殿、お身も大番頭おおばんがしらの子息の身で、自由な恋をし、拘束のない境地へ去られたのは賢明でござるよ。その段、周馬も敬服いたしている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
評定役ひやうぢやうやく、著座、大番頭おおばんがしら出入司しゆつにふづかさ、小姓頭、目附役の順序を以て、幕府の目附に謁し、杯を受けるのであるに、著座と称する家柄の采女がかへつて目附役の次に出された。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ただ弦之丞は大番頭おおばんがしら法月一学のせがれ、公儀の隠密役としての御印可ごいんかあるや否や、その点だけがちと心配であるが……
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一、大番頭おおばんがしらの若様ともある弦之丞様に似合わねえ、男らしくもねえ! と、こう独りでどなりましたぜ
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)