大湊おおみなと)” の例文
ことにあの、大湊おおみなとの一夜——あの時に、あの晩に、お君を擁護して大湊の与兵衛の舟小屋をたずねなければ、こういうことはなかったのだ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その五十鈴川の水は、大湊おおみなとの口へながれ入っているが、武蔵を乗せてゆく渡舟の櫓音ろおとは、ただ無心な諧音かいおんの波を漕いで行く。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女文字おんなもじだね、女にしちゃよく書いてある。なんだ……大湊おおみなと、与兵衛様方小島様まいる——おやおや、この宛先は大湊だよ」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
渡舟わたしの者が、呶鳴っておりますがの。旦那は大湊おおみなとへお越しになるのではございませぬか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その前の晩、大湊おおみなといかりおろした十六たんの船がありました。船の上から大湊の陸の方をながめて物思わしげに立っているのはお松でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すぐ対岸の大湊おおみなとへ行く船はいっぱいだった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、お玉の方はどこへ逃げたやら行方知れずでございますが、それと相棒あいぼう米友よねともという奴が大湊おおみなとの浜で捉まりましたそうでございます」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「もし、わたしは君でございます、伊勢の大湊おおみなとを出る時に船でお世話になりました、あの君と申す女でございます」
しかもその二幕もあいやまだの大湊おおみなとの船小屋だのいい処は除いて久能山と徳間峠しか出せないことになったから、ほんのお景物という程度に過ぎなかった。
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お松にとっては道庵は再生の恩人であり、伊勢参りをした時に大湊おおみなとで会って奇遇を喜んだこともありました。これはこれはと言って道庵もお松も直ぐ打解けた。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伊勢の国大湊おおみなとから出た若山丸は無事に伊勢の海を出て、東海の航路をはしって行ったのでありましたが、乗手の中にただ一人、無事でなかったのはお玉でありました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これらの連中がみんな東を指して去ってから後、十日ほどして、一人の虚無僧こむそう大湊おおみなとを朝の早立ちにして、やがて東を指して歩いて行きます。これは机竜之助でありました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)