大森おおもり)” の例文
見つめていてもがくらむ。事務員に聞いてみるとおれはここへ降りるのだそうだ。見るところでは大森おおもりぐらいな漁村だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
保吉やすきちの海を知ったのは五歳か六歳の頃である。もっとも海とは云うものの、万里ばんりの大洋を知ったのではない。ただ大森おおもりの海岸に狭苦せまくるしい東京湾とうきょうわんを知ったのである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第十二号機は、大森おおもり山王さんのうの森へうち落された。第九号機は東京湾の波のもくずと消えてしまった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
地鳴りの現象については、わが国でもすでに大森おおもり博士らによっていろいろ研究された文献がある。
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
うわさに聞く御台場おだいば、五つの堡塁ほうるいから成るその建造物はすでに工事を終わって、沖合いの方に遠く近く姿をあらわしていた。大森おおもりの海岸まで行って、半蔵はハッとした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さてお話は、それから数日の後、大森おおもりの山の手にある玉村氏本邸の出来事に移る。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
列車はいつのまにか、新緑の大森おおもりの街を走っている。
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
火山の爆音の異常伝播いじょうでんぱについては大森おおもり博士の調査以来藤原ふじわら博士の理論的研究をはじめとして内外学者の詳しい研究がいろいろあるが、しかし、こんなに火山に近い小区域で
小爆発二件 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
何しろここは東京の中心ですから、窓の外に降る雨脚あまあしも、しっきりなく往来する自働車や馬車の屋根を濡らすせいか、あの、大森おおもりの竹藪にしぶくような、ものさびしい音は聞えません。
魔術 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)