もし現代の科学を一通り心得た大岡越前守おおおかえちぜんのかみがこの事件をさばくとしたら、だまされたほうも譴責けんせきぐらいは受けそうな気がする。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
現代の裁判制度は東京地図の煩雑なるが如く大岡越前守おおおかえちぜんのかみ眼力がんりきは江戸絵図の如し。更にゆれば東京地図は幾何学の如く江戸絵図は模様のようである。
大岡越前守おおおかえちぜんのかみは、江戸町奉行になってから一、二年った頃、人相と云うことに興味を持ち始めた。
奉行と人相学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この淡路守の相手は、大岡越前守おおおかえちぜんのかみなのである。江戸南町奉行大岡越前守忠相ただすけである。老中、若年寄、御小人目附おこびとめつけ、寺社奉行、勘定奉行、町奉行と来て、これを四十八高という。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大岡越前守おおおかえちぜんのかみとか、遠山左衛門尉とおやまさえもんのじょうとかいう、後世までも聞えた名奉行はともかく、大抵のお白洲しらすでは、筋書通りそれを繰り返して口書拇印くちがきぼいんを取り、最後の言い渡しをするだけであったのです。
大岡越前守おおおかえちぜんのかみなども確かにその一人ですよ。小説で云えば、ポオの『ル・モルグ』の始めに、デュパンが友達の身体の動き方一つによって、その心に思っていることを云い当てる所がありますね。
D坂の殺人事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
江戸南町奉行えどみなみまちぶぎょう大岡越前守おおおかえちぜんのかみ忠相である。外桜田そとさくらだのお役宅やくたく、書院作りの奥の一間だった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まもなく愚楽は、時の江戸南町奉行大岡越前守おおおかえちぜんのかみさまと相談をいたしまして、ひょっとすると将軍のお手もとからも、こけ猿をつけねらう新手の別働隊が、繰りだされそうな形勢となった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)