夕照ゆふばえ)” の例文
北には筑波が朝紫に、西に富士はくれなゐの夕照ゆふばえにくつきりと白く、東南に安房上總は青黛のやうに、海となる空のはてに淡い。
大川ばた (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
空は僅かに夕照ゆふばえの名残をとどめてゐるだけで、光のうすい星影が三つ四つ数へられた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
森の木葉このはのしげみは、闇を吐き出だす如くなれど、夕照ゆふばえは湖水に映じてわづかにゆくてに迷はざらしむ。この時聞ゆる單調なる物音は粉碾車こひきぐるまきしるなり。すべてのさま物凄く恐ろしげなり。