たに)” の例文
前面の霧が幕を絞るようにすうととれて、五十歩の先に谺然としてたにが開け、対岸には四、五十丈の滝が幾段にも連って、雲の中から奔下している。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
三人みたりしずかに歩みて、今しもたにわたり終わり、坂を上りてまばゆき夕日の道にでつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
臆病おくびょうなどと云うことではなくして、兄の自動車での惨死が、善良な純な彼の心に、自動車に対する、ことに箱根の——唱歌にもあるけわしい山や、たにの間を縫う自動車に対する不安を
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
たにの間を縫ふ自動車に対する不安を、植ゑ付けてゐるのであつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)