堤防つつみ)” の例文
其処そこで、この山伝いの路は、がけの上を高い堤防つつみく形、時々、島や白帆しらほの見晴しへ出ますばかり、あとは生繁おいしげって真暗まっくらで、今時は、さまでにもありませぬが、草が繁りますと
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やッ、」というて目をみはる義作と一所に吃驚びっくりしたのは、茶店の女で、向うの鍵屋の当のかたき、およねといって美しいのが、この折しも店先からはたはたと堤防つつみへ駆出したことである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや神通が切れた、郷屋敷田圃たんぼ堤防つつみが崩れた、牛のふちから桜木町へ突懸つッかかる、四十物町が少し引くかと思うと、総曲輪がうみだという。それに、間を置いちゃあ大雨ですから市中はいくさです。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)