垂髪さげ)” の例文
その横の化粧部屋で、妾は久し振りにお垂髪さげって、新しいフェルト草履ぞうりを突っかけながら、振り袖のヨソユキと着かえていた。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
漸くお垂髪さげにしたばかりの愛くるしい顔が彼の頭にはっきり刻まれていた。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
頬を破られたイガ栗頭が……眉間を砕かれたお垂髪さげの娘が……前額部の皮を引き剥がれたひげだらけの顔が……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それが又おかしいのよ。着くと直ぐに美容院の先生みたいな人が妾を捕まえて、お湯に入れて、お垂髪さげに結わせて、気味の悪いくらい青白いお化粧をコテコテ塗られちゃったのよ」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
舞踏狂らしいお垂髪さげの女学生が、私たちの立っている窓のすぐ下に、肩まで手が這入るような砂の穴を掘って、ボール紙の王冠と、松の枯れ枝を利用しながら、小さな陥穽おとしあなを作りかけているのが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの土下座している髯男の周囲まわりを跳まわっておりますお垂髪さげの少女は、高等女学校の二年生で、元来、内気な、憂鬱な性格で御座いましたが、芸術方面に非常な才能をあらわしておりまするうちに
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)