垂菰たれごも)” の例文
三四 白望の山続きに離森はなれもりというところあり。その小字こあざに長者屋敷というは、全く無人の境なり。ここに行きて炭を焼く者ありき。或る夜その小屋の垂菰たれごもをかかげて、内をうかがう者を見たり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この鉱山のために炭を焼きて生計とする者、これも笛の上手じょうずにて、ある日ひるあいだ小屋こやにおり、仰向あおむき寝転ねころびて笛を吹きてありしに、小屋の口なる垂菰たれごもをかかぐる者あり。驚きて見れば猿の経立ふったちなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)