因循いんじゆん)” の例文
また因循いんじゆんの質にてテキパキ物事のはかどらぬ所があるが、生来忍耐力に富み、辛抱強く、一端かうと思ひ込んだことはどこまでもやり通し、大器晩成するものなり……
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
さう因循いんじゆんしてをるから、ますます陰気になつて了ふのだ。この間も鳥柴としばの奥さんに会つたら、さう言つてゐたよ。何為なぜ近頃は奥さんはちよつともお見えなさらんのだらう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
鹿太は物騒がしい世の中で、「黒船」のうはさの間に成長した。市郎左衛門の所へ来る客の会話を聞けば、其詞そのことばの中に何某なにがしは「正義」の人、何某は「因循いんじゆん」の人と云ふことが必ず出る。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
私には政治上の位地を占有した婦人は比較的深い注意と興味とをもつて婦人自身の義務につくす事が出来ない様に見えます。と云つて私共婦人を退化した因循いんじゆん卑屈の人種であると思ふのでは無いのです。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「さあ行つて見ませう、ええ、胃病の薬です。さう因循いんじゆんしてゐてはけない」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)