ささやき)” の例文
彼女は卑狗のささやきを聞きながら、卑狗の波打つ胸の力を感じると、崩れる花束のように彼の胸の中へ身を投げた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あたかもこの土の色の変った機に乗じて、くう外道変化げどうへんげささやきかと物凄ものすごい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ジークフリート」はバイロイトの祝典音楽レコードのほかには、「森のささやき」をメンゲルベルクがニューヨーク・フィルハーモニック管弦団を指揮したのがビクターにある(JD一五七〇)。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
十分ばかり起きあがらずに待っていたが、細君は入って来ない、そこでまた廊下へ出て、廊下を日本間の方へ往ったのだ、往ってみると、怪しいささやきのしていたへやの前の雨戸が五六寸いているから
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ささやきを聞せまつらん。7270
「耳を、」肩を取って、口をつけ、二人はの下蔭にささやきを交え、手を組んで、短いのと、長いのと、四脚を揃えたのがかすかに見える。お雪は少し離れて立って、身を切裂かるる思いである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人夫たちの中にささやきが起った。権兵衛は呼吸を調えた。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)