周囲そこいら)” の例文
旧字:周圍
父の呼ぶ声がた聞えた。急に丑松は立留つて、星明りに周囲そこいらすかしてたが、別に人の影らしいものが目に入るでも無かつた。すべては皆な無言である。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
木か何かに縛りつけて置いて家へ帰ろうと思って周囲そこいらを見廻した。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
急に周囲そこいら闃寂しんかんとして来た。寺院おてらのように人気ひとけが無かった。お種は炉辺ろばたに坐ってひとりで静かに留守居をした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
教場の窓は皆な閉つて、運動場うんどうば庭球テニスする人の影も見えない。急に周囲そこいら森閑しんかんとして、時々職員室に起る笑声の外には、さみしい静かな風琴の調しらべがとぎれ/\に二階から聞えて来る位のものであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)