吝々けちけち)” の例文
「私はな、いくら零落おちぶれても、遊び場所などへ出かけて行って、吝々けちけちするのは大嫌いだ。浅井さん、私は大体そういった性分だ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「冬は寒いもの、炭薪など、吝々けちけちせず、十分におつかいなさい。いちいち部屋がしらの御判なども要らぬ。自由に、炭倉へ参って、要るだけお持ちなされ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにしても収穫みいりの悪いのに慣れている彼の金の使いぶりは、神経的に吝々けちけちしたもので、計算に暗いだけになお吝嗇しみったれていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二十五年封じこめられていた、貧困な結婚生活の償いをでも取ろうとするかのように、気持は吝々けちけちしながら計算はルウズになりがちであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
吝々けちけちするのは芸者の禁物であり、辛気しんきくさい洗濯や針仕事は忙しいには無理でもあり、小さい時から家庭を離れている銀子は、見ず知らずのこの土地へ来てからは
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「阿父さんのように吝々けちけちしていたんじゃ、手広い商売は出来やしませんよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何を買うにも金を吝々けちけちしないで、米沢町のどこの店に欲しい小紋の羽織が出ているとか、誰某たれそれのしていたような帯が買いたいとか、または半襟はんえり、帯留のような、買ってもらいたいものがあり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「そんなに吝々けちけちしなさんなよ、今に儲けてどっさりお返ししますよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)