君香きみか)” の例文
下谷したやのお化新道ばけしんみち君香きみかといって居りました。旦那の御屋敷へ御けいこに上って御酒をいただいた帰りなんぞに逢引をした事が御在ました。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
唇の右下にある大きな黒子が、女の顔にあやしい色気を附与している。金五郎は、たしか、この女の名は君香きみかというのだったと、昨夜の記憶を呼びおこした。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
しかしそのとたん、突然ふすまがあき、いつにもまして絢爛けんらんな装いをした君香きみかがはいって来るがいなや
自分のところに渋皮のけた貰いっ子をしましてね、それが君香きみかといって後に舞妓まいこで鳴らしました、そいつを九条家の島田左近様に差上げまして、それが縁で島田様に取入り、そのお手先をつとめて
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
君香きみかさん、さ、行こ。阿呆らしい。こんなわからず屋、相手にしたって、仕様あらへん」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
彼がその女、——名は君香きみかといった——にあったのは昨夜が二度目であった。最初彼女がオランダ屋敷へおもむく列の中にいたのをちらと通りで見た時、彼は実に撃たれたように驚いたのであった。
君香きみかの手紙を読み終えるまで、青くなったり、赤くなったり、眼を白黒させたり、息を蒸気のように吹きだしたり、肩を大波打たせたり、幾度か、眼まいをおぼえて倒れそうになったりした。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
君香きみかのことも忘れた。