向前むこうがわ)” の例文
お杉はじぶんさかずきへ酒をぎながら、汚い食卓ちゃぶだい向前むこうがわにいる長吉の方を見た。眼の不自由な長吉は、空になった盃を前へ出していた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お鶴は不快そうな顔をして飯をいだした。お鶴の向前むこうがわにいた音蔵は、何時いつの間にかはしをやめていたが、お杉が長吉の盃へ酒を注いだのを見ると、ほっとしたように箸を動かした。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)