厭世家えんせいか)” の例文
高柳君は口数をきかぬ、人交ひとまじわりをせぬ、厭世家えんせいかの皮肉屋と云われた男である。中野君は鷹揚おうような、円満な、趣味に富んだ秀才である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊豆は死よりも冷酷な厭世家えんせいかって、小笠原の自殺した現場へも告別式へも出なかったので、誰に逢うこともなかったのである。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
私はつて、他人の前では非常な楽天家で、むしろ狂的にまで快活な人が、その実は、彼が一人切りでいる時は、正反対の極端に陰気な、厭世家えんせいかであったことを目撃しました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
またけつして厭世家えんせいかたるの權利けんりかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)