危地きち)” の例文
おれは余り人を信じ過ぎて、君をまで危地きちに置いた。こらへてくれたまへ。去年の秋からの丁打ちやううち支度したくが、仰山ぎやうさんだとはおれも思つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
忍剣は、どんな危地きちに立っても、けっしてうろたえるような男ではない。ただ、伊那丸の身をあんじてあせるのだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたは、甲斐源氏かいげんじの一つぶだね——世にもとうといでありながら、危地きちをおかしてお父上を求めにまいられた。孝道こうどう赤心せきしん、涙ぐましいほどでござる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玉垣たまがきを照らしている春日燈籠かすがどうろう灯影ほかげによく見ると、それこそ、裾野すその危地きちを斬りやぶって、行方ゆくえをくらました木隠龍太郎こがくれりゅうたろうと、武田伊那丸たけだいなまるのふたりであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)