印絆纒しるしばんてん)” の例文
大工らしい印絆纒しるしばんてんの男が一人、江尻えじりあたりの海を見ながら、つれの男にかう言つてゐた——「見や。浪がチンコロのやうだ。」
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
早朝、誘いに来てくれた留さんは、わらじ脚絆きゃはんに、印絆纒しるしばんてんを着、真田紐さなだひもでしばった大きな弁当箱を肩に掛け、いなせなとびみたいな恰好していた。
五角、扇形おうぎがた軍配ぐんばい与勘平よかんぺい印絆纒しるしばんてんさかずき蝙蝠こうもりたことんび烏賊いかやっこ福助ふくすけ瓢箪ひょうたん、切抜き……。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
庄吉は勇ましいかしらの姿を見た、それから御幣ごへいと扇と五色の布とがつけてある大黒柱の神々しさを見た、そしてまた革の印絆纒しるしばんてんを着て少し傍に離れて立っている棟梁とうりょうの鹿爪らしい顔を見た。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)