匇匇そうそう)” の例文
この歸りに更にロダン先生に逢つた事の嬉しさを今此旅先で匇匇そうそうと書いてしまふのは惜しい氣がする。暫く一人で喜んで居よう。
巴里の旅窓より (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
二、里見さとみ君の「蚊遣かやり」もまた十月小説中の白眉はくびなり。唯いささ末段まつだんに至つて落筆匇匇そうそううらみあらん。他は人情的か何か知らねど、不相変あひかはらず巧手かうしゆの名にそむかずと言ふべし。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
忠家は其処そこに気がついたから、出家することだけは見合せたが、匇匇そうそうその場は逃げ出したさうである。すると中戸川氏の小説も文学史的に批評すれば、前人未発と云ふことは出来ない。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)