初蕈はつだけ)” の例文
離れ/″\の松の樹が、山の端に登つた許りの朝日に、長い影を草の上に投げて、葉毎に珠を綴つた無数の露の美しさ。秋草の香が初蕈はつだけの香を交へて、深くも胸の底に沁みる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
熊笹くまざさ、柴などを分けて、私達はきのこを探し歩いたが、その日は獲物は少なかった。枯葉をかま掻除かきのけて見るとたまにあるのは紅蕈べにたけという食われないのか、腐敗した初蕈はつだけ位のものだった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)