凄婉せいえん)” の例文
ここにいたれば、もはやただわがむっつり右門の、名刀村正むらまさのごとき凄婉せいえんなる切れ味を待つばかりです。
死を決した岡柳秀子は、その凄婉せいえんな眼を閉じて、氷よりも冷たい黒鉄くろがねの金庫の扉に裸体をもたれました。
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
庸三はもちろん他の男にも同じ表情をしあるいはもっと哀切凄婉せいえん眉目びもくを見せるであろう瞬間を、しばしば想像したものだったが、昨夜のように気分の険しさの魅惑にも引かれた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
凄婉せいえんみを見せると、岩路はほどたたぬまに黒血を吐きながら、父助宗の行くえと八束穂槍やつかほやりの行くえを永遠のなぞに葬りつつんで、ぐったり前へうっ伏しました。
女は熱いとも言わず、凄婉せいえんな瞳を挙げて、世にも怨めしそうに、利助の顔を見上げました。
今こそまことに冴え冴えと冴えやかに冴えまさったあの眉間きずに、凄婉せいえんな笑みをうかべつつ
横の方から、しきりに凄婉せいえんな流し眼を送るお勝に気兼ねしいしい丹之丞はこう言うのでした。