典侍ないしのすけ)” の例文
典侍ないしのすけへお言いになった。典侍はきまり悪さも少し感じたが、恋しい人のためには濡衣ぬれぎぬでさえも着たがる者があるのであるから、弁解はしようとしなかった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
尚侍ないしのかみの職が欠員であることは、そのほうの女官が御用をするのにたよる所がなくて、自然仕事が投げやりになりやすい、それで今お勤めしている故参の典侍ないしのすけ二人
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
花散里はなちるさと夫人は紫夫人も明石夫人も御孫宮がたのお世話に没頭しているのがうらやましくて、左大将の典侍ないしのすけに生ませた若君を懇望して手もとへ迎えたのを愛して育てていた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
よほど年のいった典侍ないしのすけで、いい家の出でもあり、才女でもあって、世間からは相当にえらく思われていながら、多情な性質であってその点では人を顰蹙ひんしゅくさせている女があった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
惟光これみつ典侍ないしのすけの職が一つあいてある補充に娘を採用されたいと申し出た。源氏もその希望どおりに優遇をしてやってもよいという気になっていることを、若君は聞いて残念に思った。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
典侍ないしのすけ内侍ないし命婦みょうぶも絵の価値を論じることに一所懸命になっていた。女院も宮中においでになるころであったから、女官たちの論議する者を二つにして説をたたかわせて御覧になった。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こんなうわさを聞いている典侍ないしのすけは、自分を許しがたい存在として嫉妬しっとし続ける夫人にとって今度こそ侮りがたい相手が出現したではないかと思って、手紙などは時々送っているのであったから
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
東宮宣下せんげの際の宣旨拝受の役を勤めた典侍ないしのすけがお湯をお使わせするのであった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言いながら、御簾のほうへからだを寄せる源氏に、典侍ないしのすけはいっそう昔が帰って来た気がして、今も好色女らしく、歯の少なくなった曲がった口もとも想像される声で、甘えかかろうとしていた。
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
先帝——みかど従兄いとこあるいは叔父君おじぎみ——の第四の内親王でお美しいことをだれも言う方で、母君のおきさきが大事にしておいでになる方のことを、帝のおそばに奉仕している典侍ないしのすけは先帝の宮廷にいた人で
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「こちらへ上がりますと、またいっそうお気の毒になりまして、魂も消えるようでございますと、先日典侍ないしのすけは陛下へ申し上げていらっしゃいましたが、私のようなあさはかな人間でもほんとうに悲しさが身にしみます」
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)