兜帽かぶとぼう)” の例文
再び小銃に弾をこめたジャン・ヴァルジャンは、その将校をもねらい、その兜帽かぶとぼうを兵士の兜帽と同じ所に打ち落とした。将校もたまらずにすぐ退いてしまった。
ある夏ロンドンで珍らしい暑い日があった。兜帽かぶとぼうを冠った消防夫に列んで子供が頭から水管の水をかけて貰っていたのはやっぱり斯ういう建壊しのあとの空地だった。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一人は白い背広を着た平林大尉、一人は軍服に兜帽かぶとぼうをかぶった鳥尾軍医、もう一人は白いターバンを頭に巻いた、見知らないインド人だった。英夫の兄は出迎えに来ていないらしかった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
若い娘のようなほお、腕にかかえた剣、蝋油ろうゆをぬった口髭くちひげうるしぬりの兜帽かぶとぼう、それにまた、金髪、大きな青い目、得意げな傲慢ごうまんなきれいな丸い顔つきで、マリユスとはまったく反対だった。
暴徒らはふいに、近くの屋根の上に日光に輝く一つの兜帽かぶとぼうを見いだした。ひとりの消防兵が高い煙筒に身を寄せて、偵察ていさつをやってるらしかった。その視線はま上から防寨の中に落ちていた。
雨の中に炬火の光で照らされた彼らの兜帽かぶとぼうは、屋根の上を行ききしていた。同時にテナルディエは、バスティーユの方に当たって、低い東の空がほのかな青白い色に痛ましく白んでくるのを見た。