偏衫へんさん)” の例文
律師は偏衫へんさん一つ身にまとって、なんの威儀をもつくろわず、常燈明の薄明りを背にして本堂のはしの上に立った。たけの高い巌畳がんじょうな体と、眉のまだ黒い廉張かどばった顔とが、ゆらめく火に照らし出された。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
はて法会ほうえの建札にしては妙な所に立っているなと不審には思ったのでございますが、何分文字が読めませんので、そのまま通りすぎようと致しました時、折よく向うから偏衫へんさんを着た法師が一人
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)