価段ねだん)” の例文
その上価段ねだんが半分だと云う。柞蚕さくさんから羽二重はぶたえが織れて、それが内地の半額で買えたらさぞかろう。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の新調はどこかのデパートメント・ストアの窓硝子まどガラスの中に飾ってあるぞろいくくりつけてあった正札を見つけて、その価段ねだん通りのものを彼が注文して拵えたのであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女はそのしんとした玄関の沓脱の上に、行儀よくそろえられたただ一足の女下駄を認めた。価段ねだんから云っても看護婦などの穿きそうもない新らしいその下駄が突然彼女の心をおどらせた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こいつの方なら受け合えない代りに価段ねだんを引いておきますと云った。僕はこの問答をいまだに記憶しているんだがその時小供心に女と云うものはなるほど油断のならないものだと思ったよ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そりゃ、価段ねだんだけだから——一本三十銭と三銭とは比較にならないからな」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「だから今度はあなたのような丈夫で奇麗なのを買ったら善かろうと思いますんで」と細君はパナマの価段ねだんを知らないものだから「これになさいよ、ねえ、あなた」としきりに主人に勧告している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)