仕舞湯しまいゆ)” の例文
それが天にも地にもたった一人の身よりである、お八重やえという白痴の娘を連れて、仕舞湯しまいゆに入りに来たのであった。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いつも、こんな時には留守居役の老女中、お早婆さんが、居睡いねむり半分、仕舞湯しまいゆつかっているはずである。
仕舞湯しまいゆをつかった作が、浴衣ゆかたを引かけて出て来ると、うそうそ傍へ寄って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その晩も冬至の柚湯で仕舞湯しまいゆに近い濁った湯風呂の隅には、さんざん煮くたれた柚の白い実が腐った綿のようにきたならしく浮いていた。わたしは気味悪そうにからだを縮めてはいっていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)