河海抄は此の故事を今昔物語こんじゃくものがたりから引用し、「大和物語やまとものがたりにも此事あり」と云っているけれども、現存の今昔や大和物語にはっていない。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから次には木の本末もとすえ、および親子馬おやこうまという話があって、二つともに八百何十年もまえの、『今昔物語こんじゃくものがたり』という本に出ている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
幾種の踊りのうちでも、わけてきょうがられたのは、高野明神の“宇奈手神楽うなでかぐら”で、舞踊の筋は「今昔物語こんじゃくものがたり」のうちにも見える。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにしてもまだ十分女の暗黒面を『著聞集ちょもんじゅう』や『今昔物語こんじゃくものがたり』などのように露骨に書いてないのは、当時の手本である支那文学にそういう類の物がなかったせいでもありましょうが
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
従って岩見重太郎、もしくは『今昔物語こんじゃくものがたり』のちゅうさんこうやのごとき例は、すこしでも動物学の知識を損益するところはないわけである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、多病で——などといいたてて、早くに、堂上仕えをやめ、夏は、頼通の別荘、宇治の平等院びょうどういんへ間借りして、避暑がてら、「今昔物語こんじゃくものがたり」の著作などやっていた。
今昔物語こんじゃくものがたり』や『沙石集しゃせきしゅう』に、半分以上も是と同じ話があるので、そそっかしい者には古い話の保存とも見えるが、彼には仙郷が無くまた使者の失敗と懲罰ちょうばつということが無く
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)