今出川いまでがわ)” の例文
父は太政大臣実兼十一世の孫菊亭右大臣晴李はるすえで、今の菊亭侯爵家の祖先に当り、その邸が今出川いまでがわにあるので「今出川殿」と号した。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今出川いまでがわ大納言だいなごん様の御屋形から、御帰りになる御車みくるまの中で、急に大熱が御発しになり、御帰館遊ばした時分には、もうただ「あた、あた」と仰有おっしゃるばかり、あまつさえ御身おみのうちは
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
古いころから、人が通り風の気にふれると、不意に皮膚が裂けて鎌形の傷がつき、はなはだしく出血して生命いのちをおとすことがあった。越後えちご信濃しなのや京都の今出川いまでがわの辺ではたびたびあったことである。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
五月十六日遠山雲如とおやまうんじょが京師の寓居ぐうきょに没した。享年五十四。『雲如先生遺稿』には洛北らくほく愛宕あたご郡浄善寺に葬るとしてあるが、『平安名家墓所一覧』には寺町今出川いまでがわ上ル上善寺としてあるそうである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
本当の家は京都の今出川いまでがわにあるが、ここでわしのために定めてくれた家は、今まで空家あきやになっていた——この幽霊の出そうな空屋敷に、いわば座敷牢といったようなものに、わしはひとり納められて
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)